■UN RELATIF HORAIRE No4
1980年/16ミリ/パートカラー/サイレント/5分
UN RELATIF HORAIRE(時間的相対)のシリーズを制作していた当時ずっと月が気になっていた。何処までも追いかけて来る月、車で走っていると右の窓に見えていたのが左の窓へ移っている、車が向きを変えたからだ。この作品では、合成された月は、車が向きを変えてもずっと同じように追いかけて来る。
撮影は、当時住んでいたパリ11区の共和国広場周辺を車で走りながら行なった。信号で停車する交差点の先には、当時良く行ったカフェがあった。向いが消防署で、消防士がたむろしていた。彼らはよくピンボールで飲み物代を賭けていたのだが、誘われて対戦したことがあった。数人でゲームをやって、一番点数が少なかった者が全員の飲み物代を払うルールでは、絶対に負ける心配は無かったからだ。その後、村上春樹『1973年のピンボール』が出版されて、何となく読むことになったのはピンボ−ルの思い出のためだったのだろう。当時のピンボールは点数が回転する数字のドラムで表示されるようになっていた。表示し切れない点数を出すとどうなるのか、と思ってずっと挑戦していたのだが、ある日呆気無くそれが達成された。ゼロが全部並んで、後は何事も無かったように又進んで行くだけだった。以降ピンボールもやらなくなった。とりわけ点数の表示がデジタル化されて、いくらでも加算され、記憶されるようになってからは尚更だった。 |